そのあいだに、灯る — 救急と在宅の現場から — |第2話
そのまま様子を見るか、迷った日のこと
おうちで過ごす毎日の中には、
「今日はいつも通りでいいのかな」
「何かあったら、どうしよう」
そんな小さな迷いが生まれる瞬間があります。
大きな出来事ではなくても、
そのあいだに交わされる言葉や、
そっと決まる選択が、
人の気持ちを少し楽にしてくれることがあります。
このシリーズでは、
在宅医療の現場で出会った、
そんな日々の一場面を綴っていきます。
■ 夕方のご相談
その日は、夕方の時間帯でした。
ご家族から、はじめてのお電話がありました。
「少し熱があって、食事もあまり取れていなくて……
かかりつけに電話したんですが、もう外来が終わっていて……
このまま様子を見ていいのか迷っていて」
日中であれば相談できたかもしれない。
でも、時間帯によっては、それが難しいこともあります。
その「少しの時間の差」が、
判断をより迷わせてしまうことがあります。
■ 実際にお会いして分かること
お会いすると、
ぐったりしているわけではありませんが、
いつもより反応が鈍く、食事も進んでいない様子でした。
診察を進めていく中で、
軽い感染の可能性が考えられました。
その場で対応を行い、
今の状態と、これから注意するポイントを、
ご家族と一緒に確認しました。
■ 「相談してよかったです」
診察のあと、ご家族が
少し安心した表情で言われました。
「どこに連絡していいか分からなくて……
このまま朝まで様子を見るしかないのかと思っていました」
大きな処置をしたわけではありません。
ただ、状況を整理し、見通しを共有したことで、
その“迷っている時間”が、少し軽くなったようでした。
■ 時間がつくる“あいだ”
在宅で過ごしていると、
「時間帯」によって相談できる先が変わることがあります。
日中であればすぐに受診できることも、
夕方以降になると難しくなる。
その中で、
「様子を見るべきかどうか」という判断が、
宙に浮いてしまうことがあります。
■ 迷ったときに、一度立ち止まる
すぐに救急搬送が必要なわけではない。
でも、このままでいいのか分からない。
そんなときに、
一度立ち止まって、状況を整理する。
それだけで、
その後の時間の過ごし方が変わることがあります。
在宅での医療は、
特別なことをする時間よりも、
「いつもの日」を安心して過ごせることが、
何より大切だと感じています。
はっきりと答えが出る前の、
そのあいだにある時間に、
今日も静かに、小さな灯がともっています。
